新たな目標に向けてリハビリ継続なさったA様の改善事例

ご本人について

A様 60代女性

脳出血後遺症(2年2か月経過)/右片麻痺・言語障害

目標

「右手で物(食材や紙)を押さえられるようになり、調理や書字が左手でできるようになりたい」

これまでの経緯

発症から約5か月間に渡り急性期・回復期病院にてリハビリを実施し、退院後は週1回の外来リハビリ(言語聴覚療法)、週5回のデイサービスを利用しています。

「歩行時の右足の引きずりを無くしたい」
「右手で物(食材や紙)を押さえられるようになり、調理や書字が左手でできるようになりたい」
という希望で、昨年の9月より当施設のリハビリを開始されました。

歩行をメインに介入した結果、右下肢の引きずりが軽減し、現在はお一人で近所のスーパーまで買い物に行きエレベーターに乗れるまでに改善しました。

今年の3月より「手のことも気になる…」というご希望があり、上肢を中心とした週2回60分コースを本格的に開始となりました。

上肢のリハビリ開始時の様子

体幹の代償動作を使用し右上肢がヘソより上まで挙がる程度で、机上に右手を乗せることが困難でした。

右手指をわずかに曲げることが可能ですが力を緩めることが出来ず、手指を伸展させ物品を握る準備を行うことが困難だったり、介助で物品を握っても手指の力を緩めることが困難で握りっぱなしの状態でした。

各関節の関節可動域制限がありました。右上肢の筋肉は硬く短縮し、筋肉を正しく動かす準備が出来ていませんでした。

右指の腹で「何かに触れている」という感覚はありますが、物体の表面の粗さを識別することは困難で、素材の異なる物品(ツルツルした布・ザラザラした布)に触れても「全て同じ」という認識でした。

「関節が動いている」という感覚はあると言いますが、筋感覚(筋の張力や抵抗感)によるもので、本来の関節を動かす感覚とズレが生じていました。

自主練習や新しい動作に消極的で、自主練習や右上肢の使用を促すも実践できない状態でした。

主なリハビリの内容

右上肢の筋肉を緩め筋肉や腱を伸ばし、感覚が入力しやすい状態を作りました。

筋肉や骨を正しいアライメント(位置)に戻し、その状態で筋肉の収縮を促しました。

右上肢を動かす際に代償動作が右上肢を動かす際のブレーキ役となっていたため、引き込みを抑制した状態で物品操作の活動を行いました。

上肢機能の改善と共に、自主練習や実際の動作場面で右上肢の積極的な使用を促しました。

改善内容

日によってムラはあるものの、以前と比較し右上肢を挙げられるようになり、高さ75㎝程度の机上に右手を乗せることが可能になりました。 

ペットボトルなどの曲面の物品に対して手指を過度に曲げず、物品の形に合わせて手を添えられるようになりました。

訓練場面で、肘を浮かせた状態で物を押さえ保持することが可能になりました。

筋肉が緩んだことで感覚が鋭敏となり、右指の腹で3つの異なる素材(ツルツルした布・ザラザラした布・その中間の布)の認識が可能になりました。

生活場面で右上肢を使用し、書字の際に紙を押さえる、洗濯物をたたむ際にタオルを押さえる、食事の際に食器に手を添える、食器洗いの際に食器に手を添える、肘・前腕を机上に置いてスマートフォンを指に引っかけた状態で保持するなど、使用する機会が増えました。

「食器洗いの時に右手も使ってみました」と、右上肢を使用して新しい動作に自らチャレンジするようになりました。

担当セラピストからのコメント

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笑顔の作業療法士 涌井麻巳子

発症から2年以上経過したご自身の右上肢が「本当に改善するの?」という不安や、「今まで使ってなかったから…」と右上肢を使用することに対し抵抗があったようです。

経過の中で新しい動作にチャレンジする姿勢が見られ、ご本人の気持ちが少しずつ変化されています。

今後はこの変化している気持ちを大切にしつつ、新たにご本人から訴えが聞かれた「右手で味噌汁茶碗を口元まで運んで飲む」という目標に向けて、共に頑張っていきましょう!

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