車椅子を漕いで自分で移動しましょう!

脳血管障害による後遺症の程度は様々です。ほとんど病前と変わらずにすぐに退院される方もいれば、寝たきり状態になる方もいらっしゃいます。当施設にも「歩けるようになりたい」と希望される方はたくさんお越しです。そのような方は室内においても車いすを押してもらい、自分で漕ごうとしないことを多くお見掛けします。

歩行困難な状態で退院すると、

  • 寝ている時間の延長とそれに伴う身体機能の衰え
  • 能動的な活動機会の減少
  • 介護量の増加など

その後の生活に大きな影響を及ぼします。それでも車いすを自分で漕いで、なるべく自分で生活を組み立てようとしている方は、このような影響が少なくなります。

もちろんリハビリにおいては最終的な歩行の再獲得を目指しますが、一筋縄ではいかないのが現実です。車椅子を押してもらって長年過ごしていたら尚更です。そのような方にはご本人に車椅子の漕ぎ方を、ご家族様には手伝いの程度を指導させて頂きます。

ただし(ここからが本題)、日本の住宅は狭い!

日本の住宅は 3尺:91cm が基準

現在の日本の住宅のほとんどの規格には“尺貫法”の名残があります。国際基準であるメートル法では1mが基準ですが、尺貫法では3尺(約91cm)が基準となっています。例えば畳のサイズは横91cm×縦182cmのように、日本の住宅の様々なサイズは、ほとんどが91cm の倍数になっています。

■廊下を真っすぐならなんとか・・・

車椅子を使う上で不都合になるのが廊下の幅です。廊下の幅も尺貫法に従い91cmですが、これは壁芯(壁の中心部)から反対側の壁芯までの距離なので、実際の廊下の幅はここからさらに壁の厚みを引いたものになります。一般的な車椅子は横幅62~65cm程度で、自走する為にはハンドリムを押す自身の手の幅も確保しなければなりません。直進だけなら何とかギリギリで幅ということになりますが、

やっかいなのが、廊下を90度車椅子で曲がらなければならない場合です。

一般的な自走用車椅子が直角に曲がるためには、85~90cmの廊下幅が必要とされ、その場で回転する場合には直径150cmのスペースが必要とされています。つまり車椅子で家の中を移動できるのは曲がらずに行ける場所のみで、かつ行った先に回転するスペースが無ければ後ろ向きで戻ってこなければならないということになります。何度も切り返しを繰り返しながらようやく部屋に入るということを毎日の生活で繰り返すことは非常に苦痛で、ますます自分で漕ごうという気持ちが起こらなくなります。

■6 輪型車椅子のすすめ

そんな時におすすめなのが“6 輪型車椅子”です。通常の車椅子はメインの駆動輪が2つ、前方にキャスターが2つの計4輪ですが、6輪型はさらに後方にキャスターが2つ付いています。

■6輪型車椅子のメリットとデメリット

その場で車椅子の向きを変えようとした時に、回転の中心は駆動輪の位置と同じとなります。普通型車椅子の場合は回転中心が後方に位置します。すると回転中心と前方のキャスターとの距離が長くなり,結果として回転するために大きなスペースが必要になります。6輪型車椅子の場合は回転中心が車椅子の中央にきます。車椅子のほぼ中央で回転するため、普通型よりもコンパクトに曲がったり回転することができます。また、日本家屋の特徴である敷居の1~2cmの段差を解消しやすくする為に、後方に荷重することでゆっくりと前輪が持ち上がり(ウイリー)、引っ掛かりやすい前部のキャスターが乗り越えやすくなっています。その際、後部のキャスターが接地している為に、後ろに倒れない構造となっています。まさに日本の住宅内移動向きの車いすとして製作されましたが、回転能力に優れるがゆえに直進能力は劣ったり、後部のキャスターが接地するがゆえに前部のキャスターの持ち上がる幅が制限されて、高い段差を越えるのは困難となっています。また段差を昇るときには、前部のキャスターが段上に上がってから、体重を前にかけウイリーを戻すように前傾して漕ぐなど、少し操作にコツが必要かとも思われます。

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普通型と6輪型の回転の違い

■さらに方向転換に特化した車椅子 廊下幅65cmでも曲がれる

そんな回転性能に優れた6輪型車椅子ですが、松永製作所 の『ネクストコアくるり』と言う6輪型車椅子は90cmのスペースがあればその場で1回転できるという驚異の回転性能を誇っています。廊下幅が65cmあれば曲がることが可能で、尺貫法で建てられた住宅でも問題ありません。さらには壁に当たった際の傷付き防止のバンパーが装着されているなど、狭いスペースを移動することを前提として造られています。

 もしご自宅の廊下幅などが理由で車いすの自走を断念している方がいらっしゃったら6輪型車椅子を検討されてはいかがでしょうか。上記のメリットとデメリットは表裏一体ですので、実際に家屋内にて納得いくまで自分で漕いでみることをお勧めします。介護保険を取得されていれば、福祉用具業者さんにお試しレンタルさせてもらうこともできると思いますよ。

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「ネクストコアくるり」※写真提供 松永製作所ホームページ https://www.matsunaga-w.co.jp/

この記事を書いた人:理学療法士 徳田健二

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笑顔の理学療法士 徳田 健二
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